一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「かよ子さん、僕とお付き合いしてくれる?」

私は突然の告白に思わず顔を横に振った。

「あの...お付き合いはできません」

神崎さんは私の答えに「そっか。まだ駄目か」と苦々しく笑った。

しかし、一向に抱きしめたまま離してはくれない。

「すみません..そろそろ離してもらえませんか?」

蚊の鳴くような声で懇願するが
神崎さんは「うん」と言いながら抱きしめた腕を緩めようとはしない。


はじめはなんとか離れようと試みたが
ギュッと離さない神崎さんの腕に包まれて
あまりの心地よさに強く抵抗することをやめた



「あの...」


「あと少しだけ...」

神崎さんの抱き締める腕がギュッと強まると
私の心臓もそれと同時にギュッと締めつけられる。


「離れがたいなんて初めてだな...
.........このまま連れて帰ろうかな」



「そっ、それは困ります!!」


神崎さんの言葉に咄嗟に
胸を思いきり押して離れた。


「ハハッ残念!
それじゃあ、行こうか。
もう一件連れて行きたいところがあるんだ!」


そう言って神崎さんは車を発進させた。


私の心臓は離れてもなお、
鳴り止む気配はなかった。


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