一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「いらっしゃいませ」


華やかな制服を着こなした受付嬢は
場違いな身なりの私にさえも
カウンター越しに綺麗な笑顔で迎えてくれる。



「あ、あの、すみません...
私、杉崎カヨ子と申しますが....
神崎社長にお取り次ぎしてくれませんか...?」


緊張のあまり声が震えてしまう。



「神崎...ですか...?」


私が神崎さんの名前を出した瞬間、
受付嬢の笑顔がびっくりしたような表情に変わった。

「はい....神崎社長です...」

再度私が答えると、一瞬の間はあったが
「アポイントはお取りでしょうか?」
と再び笑顔に戻った。


アポイント...そうか大会社の社長ともなるとそうそう突然押し掛けて会えるものではないのかもしれない...

「アポイントは...取ってないんですが...」


「申し訳ございません。
アポイントがありませんと
お取り次ぎできかねます。」


そう言って受付嬢は申し訳なさそうに頭を下げると、なぜかホッとしたように元のお手本のような笑顔に戻った。


そんな...!?
このまま引き返すなんてできない
こんな時どうすれば...
あっ、そうだ!

私はハッと思いだし
バックの中を漁りだした。

「あ、あの、これ...」

そして、神崎さんにもらった
名刺を取り出すと、受付嬢の前に差し出した。

平静を取り戻した受付嬢が名刺を見て
再び動揺する。
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