一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「カヨ子さん、こちらです」

エレベーターでビルの最上階まで上がると
廊下の一番突き当たりの社長室に案内される。


「し、失礼します...」

ここまできたらもう覚悟を決めるしかないと
ごぐりと緊張を飲み込むが、心臓は今にも飛び出しそうなほど強く鼓動を打って誤魔化しきれない。

神崎さんは社長室のドアを開け私を先に通すと自分も入りそっと扉を閉めた。


「待ちましたよ」


私達が社長室に足を踏み入れた瞬間
部屋の中から声が聞こえた。

そして、社長机の隣に設置してある
応接用のソファに腰を掛けていた男性が
ニヤリとこちらを見ながらゆっくりと立ち上がった。


「げっ!?総司まだいたのか?」


神崎さんはあからさまに嫌そうな顔をしている



「社長、私に内緒事とは水くさいですね...」



「別にプライベートのことまで全て
総司に話す必要はない」

神崎さんはそう言うと、ばつが悪そうにふいっと目をそらした。


「そうですか、まあいいです」


総司さんは呆れたようにフゥッと短く息を吐き、私の前まで足を進めた。


「はじめまして。
私、社長秘書をしております立花総司と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。」


私の前に右手を差し出した。


「あっ、杉崎カヨ子と申します...
こ、こちらこそ...よろしくお願いいたします...」


私は慌てて総司さんの右手を握った。

初対面の男の人に顔が熱くなってくる。

緊張すると顔が赤くなる私は、きっと今、顔が真っ赤になっているだろう。


「なるほど...可愛い人ですね。
社長が独り占めしたくなるはずだ...」


私を見つめたまま、
一向に手を離そうとしない総司さんに
「あの...」と困惑しながら言った。 

「おい、総司っ。いやらしい手で
カヨ子さんに触るんじゃない!」

神崎さんは総司さんの腕を掴むと私の手から荒々しく引き剥がした。    
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