一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
入って来たのは総司だった。

「失礼します...あれ?
泣きつかれて寝ちゃいましたか?」


そう言ってカヨ子さんの寝顔を
覗き込もうとする総司を
俺はキッと睨みつけた。


「おーコワイコワイ」

総司は笑いながら顔を引っ込める。


「それで調べて何か分かったか?」


俺は社長机まで行くと
深々と椅子に腰を掛けた。


「はい、やはりカヨ子さんの言ってたことは
事実のようです。
しかも店の評判はよろしいのですが
今は心労からかお父様が体を悪くしてるみたいです」


「そうか...
俺にひとつ考えがある。
今日の夜にでも料理長の平木さんと
話し合いの席を設けてくれ。」


「承知しました...」


そう言う総司の顔はあきらかに
ニヤついていた。


「何だ?」



「いえ、ただ可愛い御姫様のためなら
大悪魔も必死だなと思いまして...」


総司はニヤリと微笑んだ。


俺ははぁっと息を吐くと
ソファーでスヤスヤと眠っているカヨ子さんに目をむけた。

必死か...自分でもわかっている。
でも損得勘定なしでただ純粋に友達を助けたい一心でここまでやってきた彼女をなんとしてでも救ってあげたい。
いつも人付き合いは損得勘定で動いていた自分が一人の女性にこんなに振り回されるとは夢にも思わなかった。打算でもなんでもなく、ただ彼女の笑顔をみたい一心で...


「あぁ、そうだな...
御姫様が可愛くてしょうがない...」


俺のカヨ子さんを優しく見つめる姿を見て
総司はフッと笑いをこぼした。


「では、場所が決まり次第連絡しますね」

「よろしく頼む」


俺の言葉に総司は一礼すると、社長室を出て行った。


























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