一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
私は朝からそわそわと落ち着かない様子で、荷物や戸締まりを何度も確認していた。


昨日は遠足の前日のように
ワクワクしてなかなか寝付けず
朝も早くに目が覚めてしまった。


神崎さんから11時頃に来ると連絡があったが時計を見ると針は10時を指していた。


あと一時間で神崎さんがくる...

緊張で心臓が苦しいよ...


私はふぅっと大きく息を吐くと
ふいに化粧台の鏡に移った自分の姿が
目に入った。

そして、化粧台の鏡の前に腰を下ろして鏡をのぞくと、日焼け止めとリップくらいしか手をかけてない化粧っけのない顔がそこにはあった。


私は化粧台の引出しを開けると
新品同様の口紅を取り出した。


気合い入れてると思われちゃうかな...


私は逡巡しながらも、ベージュピンクの口紅を唇にそっとひいてみた。


やっぱりちょっと恥ずかしい...


やはり気恥ずかしくなった私は
メイク落としのシートを荷物から探していると、コンコンコンと玄関の方からノックの音が聞こえた。


えっ?


私は時計の方を振り返るが
時計はまだ10時を少し過ぎたところだった。


コンコンコン

空耳じゃない...

そしてもう一度ノックの音が聞こえたので
私は慌てて玄関へと向かった。


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