一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
マンションへ向かう車中
神崎さんは鼻唄を歌いながら終始ご機嫌でハンドルを握っていた。


「あ、あの...
車変えられたんですか?」


私はキョロキョロと車内を見渡す。

以前は黒のセダン車だったはずだ...
それが今日は白いボディの広いミニバンで
迎えに来たのだ。
どちらもエンブレムが外車だったので、高級車には違いないのだが。


「あぁ、かよ子さん画材道具を入れたりするから広い方がいいだろ?」



「えっ!?それだけの理由ですか!?」


平然と言ってのける神崎さんに
私は開いた口がふさがらない。


「ハハッ。それだけの理由じゃないよ...
近い将来家族ももっと増えるだろうしね...」


「えっ...?」


神崎さんはシシッと悪戯に笑ってみせるので
私は顔を赤らめた。

家族ってことは結婚..?

いや、わたしと神崎さんが結婚なんてあるわけないのだけど...

今の言い方はどうしても期待してしまう...

神崎さんはいつものようにからかってるだけだよね....?

それとも本心かな...?

本心だったらいいな...


私は窓の外に目を向けると
神崎さんと子供と三人でいる姿を想像して
自然と頬が緩んでいた。


そして翼もまた、かよ子とまだ見ぬ子供との
将来を思い描いていることなど
かよ子は知らない。










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