エリート外科医より、私は仕事!〜ウェディングドレスは心も身体もあなた色に〜

 いつものように朝、雅姫さんにお弁当を渡し、私は今日は遅番なので玄関先で「いってらっしゃい」と明るく送り出す。


 『新婚夫婦だな』なんて言われて顔が熱るのを抑えきれない。





 “あーもー恥ずかしいなんて考えているうちに、額にチュッとキスが降ってくる。

 
 抗議をしようとしても笑顔で交わされ、仕事に行ってしまう。これが最近の朝の日課になりつつある。


 夜はお互い仕事の勤務時間にもより、一緒の時間は少ないけど、朝だけは必ず笑顔で送りだすことにしている。


 でも、無理をすると怒られるけれど。


 私が熱を出した時しっかり怒られた、アメリカへの研修面接を控え、勤務態度も審査の対象となる。毎日が緊張の連続で肩に力が入り過ぎて、とうとうオーバーヒート!


 37.8度の熱を出し、それでも仕事に行こうとして『今からこんなに無茶をして、本番で力を出せなかったら一番泣きたくなるのは桜陽だぞ、分かっているのか、無理をすれば夢は離れていく』


 目に厳しさを滲ませて。


 『夢を叶えたいなら、いま力を蓄えておけ分かったな』


 そういいながら私の頭をクシャクシャして、いつもの優しい顔に戻る。



 いつのまに、こんなに支えられていたのだろう。


 だから支えてくれる雅姫さんに朝ぐらいは笑顔で会いたい。


 自分の行動も気持ちもこんなにも変わっていくものかと驚いている。



 でもまだ怖くて棘には触れられない…
 


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