宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
慌しいスタート
島谷一花は、初めて訪れたこの町の風景に驚いていた。
山と海の距離がとても近いのだ。
駐車場で車を降りてから、ずっと緑に囲まれた山道なのに…
振り返ると、すぐに海岸線から続く瀬戸内の海が見える。
大小いくつの島があるのだろうか。
目の前には島に渡る為の斜張橋が架かってているし、
貨物船やフェリー、小さな漁船も狭い水道を行き交っている。
『瀬戸内海…。』
この辺り一帯は、海も島も楽しめる美しい国立公園だ。
隣の県には列車が走る大きな橋も本州と四国を繋いで架かっている。
さぞ、ダイナミックな景観だろう。
だが、景色楽しむ前に…。これから始まる事に集中しなくちゃ。
無理やり履かされたハイヒールが歩き難くてしょうがない。
こんな坂道を7センチヒールで歩かせるなんて!
一花の隣を汗を拭きながらゼイゼイ歩くのは、脂肪たっぷりの叔父。
誰よりも憎たらしいこの男は、いったい何を考えているのだろう。
近くにいる事さえ鬱陶しいのに、今はこの男を頼らざるを得ないなんて…。
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