宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「今日、シリさんが遊びに来るんだったっけ。」
「そうなの。どうしても海里の顔が見たいって。」
今日は大切な友人が神戸に来る日だ。
「残念だなあ。僕は夜帰れないから、ヨロシク伝えといてね。」
帰れないという言葉に、海里が反応した。
「歩、今夜はオルス?」
「うん、今夜はママとお風呂に入るんだよ。」
「そう?」
「そうだよ。」
「わかった!」
「何だか、あなた達の意思の疎通って面白いよね。」
単語の羅列でも、歩と海里はわかり合えるのだ。
「以心伝心かもな、歩。」
「?いしん?れんしん?」
「やめてね。色々と難しい言葉を教え込むの。この子は保育園ですぐ披露するから。」
「そうか!すぐ覚えるのか!賢いなあ、歩は。」
「だから~。そこじゃあなくて…。」
「賢い、賢い。」
歩は海里を撫でまわしている。甥っ子をメチャクチャ甘やかしているのだ。
いつもイタズラを叱るのは一花で、甘やかすのは歩の役目だ。
「歩、スキ!」
「俺も、海里スキ!」
抱き合っているのか、振り回しているのか…。一花にはわからないが、
男らしい大胆な遊びを仕掛けてくれる歩には感謝しかない。
一花一人では、危ないからと過保護になって、愛情が偏ってしまっただろう。