宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「あ、いけない!もう出かけなくちゃ!」
「海里、気をつけて行けよ。ママから離れるなよ。」
「戸締りお願いね、歩。」
歩に後を頼んで、一花は大きめのバックを抱えると海里を連れてマンションから出た。
小さい子を連れての外出は、少し早めに出かけないと何が起こるかわからない。
トイレのタイミングも大人の様には行かないのだ。
小さなおもちゃや飲み物を入れたバックを持って、一花は新神戸駅へ向かった。
シリラットとは、離婚してから連絡を取るようになっていた。
東京のパーティーで再会した時は碌に離せなかったが、離婚して神戸に来てから
お互いに近況報告をするようになったのだ。
あのロンドンでの厳しい日々を耐えた共通点が二人を繋いでいる。
来る日も来る日も、レッスンに明け暮れ、バレエの為に生きた日々。
食事制限もした。言葉の壁もあった。シリと頑張った時間は勲章だ。
一花は怪我で、シリラットは家庭の事情でその道から途中下車してしまったが
今はお互い違う場所で暮らしながら、良い関係を築いていた。