宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「あらあ、カイリって見る目があるわあ。まさに、ヒーローってアタシにぴったりよね。」
「シリ・レッド!カッコいいです!」
真っ赤なコートをなびかせる姿が気に入ったのか、
新幹線から降り立ったシリラットは海里のヒーローになってしまった様だ。
周囲の乗客も、二人の美女と愛くるしい男の子の姿が気になるようだ。
注目を集めている事に気付かぬ彼女達は、英語と日本語の混ざった会話を続けていた。
ホームで話している姿を新幹線の中からじっと見つめている男性がいる事に、
話に夢中になっていた一花もシリも気がつかなかった。
その男性も、わずかな時間見かけただけでは自信が持てなかったが、
ホームに立つほっそりとした美しい女性の姿に釘付けになっていた。
「一花さん…か?」
おそらく、見間違いでは無いと思う。四年前と少しも変わっていない。
ただ、その腕に抱いている男の子は…。3歳くらいか…。
慣れた抱き方と、その子が安心してもたれかかっている姿から見て
母子に違いないだろう。
「まさか、社長の子か…?」