宿敵御曹司の偽り妻になりました～仮面夫婦の初夜事情～

大田原はあれこれ条件を付けてきたが、遊び好きの姪なら丁度いい。

陸は内心ほくそ笑んでいた。

彼は仕事が忙しく、年中あちこち飛び回っている『根無し草』だ。
結婚なんて、する気もなければしたくもない。

この結婚も世間に披露するつもりはなかった。
結婚もヒミツ、いずれ離婚してもヒミツ。

その娘も、陸と結婚したら贅沢三昧出来ると思っているだろうから文句は言わせない。
金さえ与えて、放っておけばいいだけだ。

暫く瀬戸内の島にある別荘にでも捨ておけば、退屈して尻尾を出すだろう。
パーティーガールがこの辺りの田舎町で暮らせる訳が無いのだから。


浮気でも何でもするがいい。
そうなったら、無条件で離婚するのにちょうど良い。

陸はそんな事を考えながら広縁から駐車場の方角を眺めていた。

すると…。


でっぷり太った大田原が、女性を連れて歩いてくるのが良く見えた。


その女性が一花だろう。
派手なワンピースを着ている…と苦笑いをしたが、それきり目が釘付けになった。




いかにも遊んでいる風な化粧や髪型なのに、その娘の歩き方は見事だった。
遊び歩いて、崩れた生活をしていそうな印象は全くない。

スラリとした足はハイヒールをものともせず、坂道を歩く。
まるで、いつか見たファッションショーのランウェイを歩くモデルの様だ。