宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「お二人のお子さんを、水杉家の後継ぎにするって項目ですね。」
「ああ。」
「一花さん、その時お側におられましたか?」
「いや、チョッと出かけていた。」
「そうですか?」
「昼までに帰るって言ってたが、夕方までいなかったかな…。」
陸は目を瞑ってしまった。何か苦いものでも飲み込んだような気分だ。
思い出したくも無い、休みを取った一週間の最後の日だ。
「いなかった?でも、その話を聞いていたんじゃあ…。」
「一花が?」
「そうとしか…私には思えなくて。」
風間は自分の考えを話す前に、重大な事も伝えなければと気を引き締めた。
「先日、新神戸の駅で…一花さんをお見掛けしました。」
「新神戸?」
「見間違いでは無いと思っています。」
「やはり、関西方面か…。」
「やはり?」
「一花の弟が大阪にいる。」
「そうでしたか。それなら、一花さんだという可能性はもっと上がりますね。」
「可能性?」
「私が見かけた一花さんは、お子さんを抱いておられました。」
「一花が…。子供を?」
「おそらく、社長のお子さんだと思われますが。お心当たりは?」