宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
飛行機で伊丹空港に着いた陸は、その足で大学病院へ向かった。
広大な緑地帯を抜けると、幾つかの建物が連なる施設が見えた。
風間が前もって連絡を入れた約束の時間には少し早いが、正面玄関の近くに白衣の青年が立っていた。
「あなたが…水杉さんですか?」
「はじめまして。水杉陸です。島谷歩先生ですね。」
一花とは少し雰囲気が違っているが、目元は良く似ていた。
体格のいい陸に比べたら細身ではあるが、身長は同じくらいなので目線はがっちりと合う。
「おかしいですね、はじめましてって言うのも。一時的には義理の兄弟だったのに。」
「そうですね…。今日は時間を取ってくれてありがとう。」
「いえ、姉の為ですから。」
二人は中庭の方へ自然と足を向けていた。
「一花は…お姉さんは元気にしていますか?」
「はい。変わりありません。」
「お義母さんのお身体は?」
「ええ、何とか頑張ってます。」
じれったいほどに、話が続かない。
陸は言葉を探しながら、焦りを感じていた。