宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~


「姉に会ってどうなさるおつもりですか?」

「詫びるしか無いでしょう。すべて、私が悪かったのですから。」

「…あの、契約みたいな結婚の事ですか…。」

「あなたも知っていたんですね。それもありますが、
 あの大田原の虚言を見抜けなかった事もです。
 あれ(・・)の話を鵜呑みにした為に、最初から間違った方向に進んでしまった。」

陸は苦々しく大田原の名を口にした。言葉にするのも嫌だった。

それは歩も同じだったようだ。

「それは…僕もです。あの頃、どうしようもないからと大田原を頼ってしまった。
 姉一人に無理強いさせたようで、ずっと辛かった…。」

母は病だし、姉も自分もまだまだ世間知らずだった。
島谷の伯父だって、自分の家業を守るのに精一杯なのにあれ以上頼れない。

だから、一花は無茶な縁談を受けたのだ。

「彼女はどうしてあそこまで家族の為に犠牲になる道を選んだんでしょう。」
「姉から、何も聞いていないのですか?」

「お恥ずかしいが、彼女と楽しく過ごす事に浮かれていました。
 この先、何年も夫婦でいるなら、話はいつでも出来ると思ってましたから。」



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