宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
一花がキッチンへ行ってしまうと、海里がしきりに陸に話しかけるようになった。
「まず、お手て洗うんだよ。」
「ああ。」
海里が洗面所に連れて行ってくれる。
「お着換え…。」
「は?」
「園の服こっち、お家の服着るの。」
ポイポイとトレーナーを脱ぐと洗濯機に放り込む。
籐のカゴに置いてあった別のトレーナーを頭から被って、頭と手を出そうと苦労している。
見ていられなくて、陸はつい着替えを手伝ってしまった。
ヒョッコっとトレーナーから顔を出した瞬間が余りに可愛くて陸は狼狽えた。
『俺の子だ』
可愛いさに狼狽えるなんて信じられないが、この気持ちをどう表現すればいいのかわからない。
『この子は、俺の息子だ』
あれ程、子供を作る事に迷いがあった事を忘れていた。
一花が黙っていた事も、もうどうでも良かった。
「海里?」
「なあに?」
「パパって呼んでくれないか?」
「いいよ。」
「海里…。」
「なに?パパ。」