宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
島で暮らした時のような、お酒に合うようなメニューでは無い。
子供向けの献立だが、海里と陸は残さず食べていた。
ひと口サイズの煮込みハンバーグ。
リンゴやコンデンスミルクを加えた少し甘いポテトサラダ。
粒のないクリームコーン缶を使った簡単なスープ。
海里も燥いで、お喋りしながらたくさん食べていた。
肝心の事は何も話さないまま、時間だけが過ぎていく。
三人の食事が終わった頃、歩が帰ってきた。
「ただいまあ~。」
「あ、歩だあ。お帰り~。」
海里が子供用のイスから飛び降りて、玄関へ駆け出して行った。
「随分、慣れてるんだな…。」
「そりゃあ、おじさんですもの。」
「毎日顔を見てたら慣れるのか…。」
「えっ?」
ダイニングキッチンに、歩が顔を出した。海里はその腕にぶら下がっている。
陸はチョッとだが、眉をピクリと動かした。
「ただいま。姉さん。」
「おかえりなさい。ご飯にする?」
「いや、コイツ風呂へ入れてくる。」
「そう?」
「だから…二人でどっかで話して来いよ。」