宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「どこまで…知ってたんだ?」
「…お見合いした時も島で暮らし始めた時も、私は何も知らなかった。
でも、結婚する時には私の産んだ子を、水杉家の後継ぎにする約束してたのね。」
「あの日、大田原との話を聞いてたんだな…。」
「聞こえたのよ!離れの窓を開けっぱなしにして話していたから!」
「すまない…。」
「なんで謝るの?もう、いいのに。」
「良くはない、海里は俺の…。」
「じゃあ、きちんと面会する日を決めるとか…方法を考えましょう。」
「どういう意味だ?」
「私達、離婚してるんだから当たり前でしょ。」
「あの子は俺の子だ。面会日を決めるなんて馬鹿な事を…。」
陸は頭に血が上って来るのを感じた。それは怒りなのか、焦りなのか…。
「俺は、形だけの父親になる気はない!」
「だって、あなたはカタチだけの結婚をするつもりだったんでしょう?」
「あの時は…。あの時はそうだった。でも、今は海里がいる。」
「じゃあ、どうしようっていうの?」
「一花、結婚しよう。」
一花は目を見開いて、かつての夫を信じられない思いで見つめた。
何で、今頃になってそんな事を言い出すの?
一度別れているのに、また結婚する気なの?
「私は今の生活を変える気はないから、無理だと思います。」
「一花…。海里の為だ。」
「子供の為だけに?」
「俺は諦めない。」