宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~


一花から息子を取り上げようとしているのではと、気が気では無かった。

何しろ、陸には財産がある。
海里へのプレゼントだって、これまでの慎ましい暮らしから見れば、けた違いだ。

弁護士を立てて争ったら、勝ち目はあるだろうか…。
一花は悪い方へ悪い方へと考えが傾いて行った。


一花の気持ちとは裏腹に、陸は楽しくてたまらない様だった。
早めに仕事を切り上げて、飛行機に飛び乗って伊丹か神戸の空港まで来ているらしい。

平日は夕食を三人で囲む日もあるし、食後のデザートを陸が持参する日もある。
マンションには泊まらず、ホテルを常宿にしている様だ。

土日もこちらの都合は関係なく、時間が出来ればやって来る。

海里は、今まで経験した事のないパパとの時間が楽しくて陸が来るのが待ち遠しい様だ。

「今日はパパ来るかなあ~。」
「どうかしら?」

「ママ、お電話して聞いてくれない?」
「それはダメよ。お仕事があるんだから。」
「チェッ。つまんない。せっかくお絵かき上手に出来たのに~。」

「どれ?見せて?」

そこには、水族館へ行った日の様子が描かれていた。
親子三人が手を繋いで、水槽を泳ぐ魚の群れを見つめている絵だ。

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