宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
愛を込めて贈る



12月20日過ぎて、冬休みに入った。海里が待ちに待っていた冬休みだ。

陸の運転するでレンタカーで隣県へ行き、あの島に行く小さなフェリーに乗った。

海里は大喜びだ。海を渡る風は冷たいが、子供には関係なさそうだ。

「お船だあ!」

狭い船の中でも、海里にとっては大型船舶と同じなのだろう。
端から端まで歩き、海面を覗く。

陸が付きっきりだ。

「落ちるぞ」「じっとして」

声を掛けまくっている。
こんなに長い時間一緒にいた事が無いのだから…。
父子にとって、何もかもが新鮮な驚きばかりなんだろう。

『また、島に来るなんて…。』

人生って先の事がわからないものだ。
何度も何度も、思いがけない方向へ転がって行く。

この前いきなり『結婚しよう』と言ったのに、陸はもう何も言わなくなった。
一花は、彼の気が変わったのだと思う事にした。
きっと『結婚』という形式に拘らない事にしたのだろう。


『もう、前のような思いはしたくない。これで十分…。』

時々、こんな風に息子を可愛がればいいじゃないか。

愛されてもいないのに『結婚』するのはこりごりだ。
いや、あの一週間だけは確かに『愛されて』いたかもしれないけど…。


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