宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
一週間だけ、二人だけであの狭い離れで暮らしたっけ。
一花の作った料理を旨いと言って食べる陸。
二人で毎日一緒に過ごした。何処にでも二人で出かけた。
夜は、これでもかというくらい愛された…と思う。
最後の夜だけは、一花が彼を求めたが。
結婚は、愛情が無ければ、単なる契約だ。
愛する人と一緒にいて、相手も愛してくれて二人の関係が成り立つのだと思う。
陸の事は最初は冷酷な人だと思ったが、その心の奥の優しさを知ったから…。
『君の事が心配だったからだ。』
『俺がいる。何も心配しなくていいんだ。』
生まれて初めて、誰かに包まれる幸せを感じた。
だから、彼に自分の全てを愛されたいと願ったのに…。
彼の心の扉は一花には開かなかった。
一方通行は、哀しい。
陸は、一度も一花の事を『好きだ』とは言ってくれなかった。
『結婚』は、彼にとっては仕事の契約と同じなのだろう。
今度はそれに、子供がついてくるのだ。
慎重に考えたら、一花と結婚したいなんて思う訳がない。
彼が決して作ろうとしなかった大田原の血を引く子がいるのだから。