宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「今日は母屋に泊まろう。山形が用意してくれている。」
別荘の正面には車が止められるので、陸はコンパクトカーで乗りつけた。
改めて、一花は正面から別荘を見た。
いつも離れにいたから、優美な別荘をしげしげと見た事は無かった気がする。
「きれいね…。」
陸は海里とさっさと中に入ってしまい、一花はぼんやりと別荘を眺めていた。
ここに半年チョッと暮らしたんだ。
色んな事があった、中身の濃い日々だった。
まだ世間知らずだった自分。精一杯だったあの頃。
知り合った人、訪ねて来てくれた人…。思い出が沢山ある。
「ママ~、早く~。」
海里の声に我に返ると、一花も別荘の中へ足を踏み入れた。
「まあ…。」
リビングに、クリスマスツリーが飾ってあった。
山形夫妻の心配りだろう。子供が滞在するのを知っているのだろうか。