宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~


そろそろ夕焼けの時間だ。
海里はいつものお風呂タイムにするらしい。

広いお風呂はそれだけで遊園地気分だろう。
陸も、初めて息子と二人で入るのだから喜んで相手をしてやっている。

二人の笑い声がキッチンにいる一花にも良く響いて聞こえてきた。
二人がお風呂で遊んでいるうちにと、一花はゆっくりと夕食の支度を始めた。

温めるだけのシチューはありがたい。子供向けのクリームシチューのようだ。

キッシュも焼くだけにしてあった。後はサラダ。
大人用に、ローストビーフも塊のまま冷蔵庫に入っていた。

ふと、キャビネットを見るとメモ書きが添えてあるワインボトルが見えた。

フルボディの赤ワイン。
『お帰り』と走り書きがしてあった。秋山夫妻からだ。

「シェフ…マダム…。」

涙が零れそうになってきた。

『ごめんなさい…。』

ありがたいのに…。泣けてくる。
夕食は楽しい時間にしたいから、涙は厳禁だ。

『海里の為』に、笑顔で楽しい時間を過ごすのだ。


< 143 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop