宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
こんな歓迎をしてもらえるなんて…。一花は言葉も無かった。
「わーい!」
保育園で習ったのか、ジングルベルのような調子外れの歌を口ずさみながら、
海里は手足を動かしピョンピョンと飛び跳ねている。ダンスしているつもりだろう。
「寒いが、ここで三人で眺めようか。」
「ええ…。海里のジャケット持ってきます。」
「君もコートとひざ掛けがいるだろう。」
デッキにあったサンダルを履いて、海里は庭に降りてしまった。
「暗いから遠くに行くなよ。」
陸はまた海里の後をついて回るようだ。
キッチンを片付けたり、楽しそうな海里と陸の様子を眺めていたらさっきまでの切なさが嘘のように晴れていた。
『これも、幸せ…。』
飲みかけになっていた秋山の差し入れの赤ワインで、一花はホットワインを作った。
海里にはホットミルクだ。お盆に乗せてデッキに持ってきた。
「冷えちゃったね。温かいもの飲みましょう。」
「ハーイ!」
陸は海里を抱き上げてダウンコートで包み込み、カップにフウフウと息を吹きかけてやっている。
彼の意外にマメな一面を見た気がした。
『いいパパだ…。』