宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
陸に促されてリビングに入った。
ソファーに改めて座ると、さっきのホットワインが効いてきたのか頬が熱い。
陸は、わざわざ一花の隣に座った。この熱は、そのせいかもしれない。
彼はそっと一花の両手を包み込むように握っている。
「一花、海里を産んでくれてありがとう。」
「えっ?」
まさかそんな風に言われるなんて、思ってもいなかった。
「この四年、君を忘れようとしたが…出来なかった。」
「陸さん。」
「そうしたら、君の消息がわかった。夢かと思ったよ。子供までいたなんて。」
「あなたは、父親には…なりたくなかったんでしょ?
厄介な大田原の血を引く子が欲しくなかったんじゃあ…。」
「それは、君と出会う前の話だ。書面を交わした時までの。」
「だって、あなたは私の事…。」
「出会ったその日に、一目惚れしてたんだろうな。」
「えっ?」
陸が信じられない事を言った。聞き間違い?一目惚れ?
ますます一花の頬は火照る。
「あの桜吹雪の坂道を、ハイヒールで歩く君を見た瞬間だ。」
「お見合いの日?」
「そうだ。」
「でも、あなたは何も言ってくれなくて…海里が欲しいだけかと思って…。」
「まさか!」