宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~


相手の事は良く知らない。年は33歳。名前は水杉 陸(みずすぎ りく)と言うらしい。


遥か昔から…。
この瀬戸内を中心に、大田原家は造船業を。水杉家は海運業を営んできた。
ある時は協調し、またある時は反発する事によって繁栄してきた因縁のある両家だ。

現在ではそれぞれ東京に本社を置くが、やはりルーツはこの地方だ。

同郷であることから、これまで何度か姻戚関係を作ろうとしたらしいが
未だに実現はしていなかった。


まずまず良好な関係だった両家だが、数十年前に瀬戸内海にある極小さな島を
一花の祖父が陸の祖父から安値で買った事から二つの家の関係は悪化した。


その経緯は記録に残っていないが、どうも水杉側は騙されて手離したと主張しているそうだ。

両家にどんな行き違いがあったのかは、当事者が亡くなった今では解明する術が無かった。


両家がギクシャクとする中、才覚の無い叔父の大田原勝男が投資に失敗した。
その補填の為に、島を産業廃棄物を投棄する場所にする事で現金を稼ごうとしたらしい。

島を大切にするからと言われて手離した水杉側はどんな気持だったろう。

水杉家は全力で大田原の杜撰な計画を潰しにかかってきた。
叔父の実力では太刀打ち出来なかったし、金策も叶わなくなってしまった。


大田原家が万策尽きた結果が、これだ。

私は、その島を持参金として水杉に嫁ぐことになったのだ。



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