宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
長い髪をタオルで拭きながら、一花は陸の目の前をスタスタ歩いてキッチンへ向かった。
ミネラルウォーターを冷蔵庫から出すとグラスに入れて飲み干している。
「あなたも飲みます?」
「いや…。」
一花をよく見ると、勿論シャワーの後だからスッピンだ。
薄い水色のゆったりしたTシャツに黒のショートパンツ。
記憶にある、あの長くてきれいな足を見て思い出した。
「一花か…。」
「そうだけど?」
あの日は化粧が厚くてよくわからなかったが、こんな顔だったか…?
クルクル巻きだった髪の毛はストレートのロングヘア。
小顔で長い手足。
黒目がちで大きな瞳。
濃いアイシャドウやマスカラの力を借りなくてもパッチリしている。
何よりそのふっくらとした唇がそそる。
普通よりやや分厚いかもしれないが、たまらなく官能的だった。
「これからお昼ご飯作るけど、召し上がります?」
何とも信じられない言葉が聞こえた。
お昼ご飯?作る?
意に反して、陸は答えてしまった。
「いただこう。」