宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
タコのカルパッチョとカルボナーラがテーブルに並べられた。
離れはこじんまりとした造りだから、
ダイニングテーブルに向かい合って座る二人の距離はとても近かった。
フォークを持って食べようとしたら、一花が「いただきますは?」とこっちを睨んだ。
思わず、「いただきます。」と答えてしまった。
何故か、いつもと違って相手のペースに乗せられてしまう。
改めて、カルボナーラをひと口食べてみる。
「旨い…。」
ほどよいクリーム感と、濃厚な卵の味。ベーコンの燻し加減が丁度良い。
つい、ガツガツと夢中で食べてしまった。
ふと一花の方を見ると、また何とも美味しそうに食べている。
これまで俺の目の前に座ったオンナで、大きく口を開けてパスタを頬張ったのがいただろうか。
否、食事は残すのが美徳の様にチマチマと食べる連中ばかりだった。
「このタコ、絶品だな。」
思わず料理の感想まで話してしまった。どうかしている、俺。
「そうでしょ、杉ばあの魚はサイコーよ。」
誰だ?杉ばあ…。