宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
何度か陸の訪問が続いた後、一花は彼に直球で聞いてみた。
「何か私に、ご用がおありなんじゃないですか?」
仕事で忙しい人が、お昼ご飯を食べる為だけに島に来るなんておかしいじゃない…。
「ん?」
陸は一瞬だが返事に詰まった。
『入籍以来ずっと会っていなかったのに、いきなり通うには理由が必要か?』
まさか、飯が食べたいからじゃあダメだろう。
いや、何で俺はこんなに頻繁にここに来て昼メシ食ってるんだ?
ふと、来週の予定を思い出した。
「来週…。」
「はい。」
「東京に来るように。」
「え?」
「詳しい事は、秘書に伝えさせるから。」
「来週のいつ…?」
「週末にパーティーがあるんだ。君は得意だろう。」
「…そうですねえ…。」
陸は初対面の印象通り、一花は軽くて派手好きなオンナだと思ったままだ。
「わかりました。」
「伝えたからな。じゃあ、来週。」
「はい。」
そう言うと、陸は立ち上がって離れの玄関へ向かった。
「ごちそうさま。旨かった。」
いつの間にか、陸も『いただきます』『ごちそうさま』を忘れないようになっている。