宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~


次の週末は、丁度お盆で、『プチ・ポアン』はお休みだ。
一花も気兼ねなく東京へ行ける。

一花が夜行バスで東京へ行く事を告げると、秋山夫妻が声を掛けてくれた。

「丁度、私達も神戸の息子の家に行くのよ。」

この小さな島でも、フェリー乗り場から水杉の別荘や『プチ・ポアン』の辺りまでは乗用車が通れる道がある。秋山夫妻は普通車を持っていた。


「車で神戸まで乗せてあげるよ。」

「よろしいんですか?」

「高速バスは夜出発だろ。こっちを夕方に出たら三宮で時間ぴったりの筈だ。」

「助かります。」
「でも、お盆の時期に東京へ行くの?」

「ええ、弟がいるんです。」
「あら、久しぶりに東京で会うんだったらオシャレしなくちゃあ。」

「前に頂いたお洋服、リフォームしたので大丈夫ですよ。」

「一花ちゃん、器用ねえ。」

「昔、バレエ習っていた頃は自分たちで衣装作ったり直したりしましたから。」

「あれ?一花ちゃんバレリーナ志望?幼稚園の先生になるんじゃなかったっけ?」

「はい、大学は幼児教育専攻です。バレエは…子供の頃の夢です。」

「バレエ衣装なら、一花ちゃん刺繍とかも出来る?」
「簡単なステッチなら大丈夫ですよ。」

「なら今度、店のナプキンに刺繍してもらおうかなあ。前から憧れだったの。
 手刺繍の入ったナプキン。」
「いいですね!まさにプチポアンです!」

「じゃあ、また準備しておくね。」

「ゴメンね一花ちゃん。うちのマダム、人使いが荒くて。」
「そんなことないですよ。私もお役に立てたら楽しいし。」


「その分は時給上げるから、許してね。」
「ありがとうございます!」




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