宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
叔父の勝男と水杉陸の間で、どんな条件で契約が交わされたかは知らないが、
私が出した結婚の条件はただ一つ。
毎月、妻に十分なお小遣いをくれる事だけ。
相手は、いかにもお金が好きな軽いオンナの出した条件だと思うだろう。
それでいい。私はお金が欲しいのだから。
東京の私立大学医学部に通っている弟が医者になるまで援助できるお金。
私が休学している大学を卒業し、幼稚園教諭の資格を取得できるまで。
あと数年だ。その間だけ、お金が欲しい。
叔父は融資を受ける変わりに水杉家の希望通り、島を手離す事にしたようだ。
大田原の叔父は亡くなった父の弟だが、薄情で滑稽な男だ。
私達にお金が無くなったのは叔父のせいなのに…。
その叔父に協力するのは嫌だが、私はそれしかお金を得る方法を思いつかなかったのだ。
叔父が言い出した結婚話だが、私は乗った。
私が我慢して結婚すれば、当分の間は母や弟が助かる。
そして私は…。
夫になる人に嫌われて、数年後にはお払い箱にされれば良いだけだ。
叔父たちはどんな契約を交わすか知らないが、私は知ったこっちゃあない。
いつか離婚した時、叔父がどんな顔をするのか見ものだわ。
一時的ではあるが、叔父も私もお金が欲しいのは同じ。
今は、大キライな叔父の事は我慢して、お互いに協力するしかない。
両眼を瞑って、この結婚に飛び込むのだ。