宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
シリラットは涙ぐんでいる。
「最近になって、あなたがケガしたって聞いて。心配してたんだよ。」
「あ、シリがお国に帰った後のケガだったから…ゴメンね。」
二人があれこれとお喋りしていたら後ろから声が掛かった。
『シリ、こちらのレディーは?』
振り向くと、小柄だがダンディーな中年の紳士が立っていた。
『パーパ!前に話したでしょ!ロンドンでとっても仲良しだったイチカよ!』
『おお、あなたがイチカさんですか。初めまして。シリの父、サーマートです。』
『初めまして、イチカです。』
一花はあえて、水杉の姓は名乗らなかった。
『今、パパは日本に赴任しているの。だから私も日本に留学中。』
『遊学のマチガイでしょ。』
『酷いわ、パパ。』
仲睦まじそうな父娘を見て、チクリと一花の胸は痛んだ。