宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
ホテルの明るいパーティ会場とは違って、クラブは薄暗かった。
照明が当たる場所だけはキラキラ輝き、ダンスフロアには若い男女が溢れていた。
『クソッ、何で俺が…。』
一花を探すのは秘書の風間に任せても良かったのだが、陸は思わずホテルを出て来てしまった。
六本木でも有名な店はホテルからも近かった。
大音量で音楽が流れる薄暗い空間で一花を探し出すのは大変かもしれない…。
そんな風に思っていたら、ダンスフロアの中央を囲むように、やけに人が集まっている。
誰かが踊っているのが注目を集めている様だ。つい、陸もそちらに目がいった。
背の高い男性が、二人の女性と踊っている。ショートカットとロングヘアの女性だ。
長い髪の女性は…一花だ。
ドレスの裾を翻し、見事なターンをしている。
スリットから覗く足は、やはり美しい。
もう一人のショートカットの女性もセクシーに身体をくねらせて踊っていた。
見た目よりボリュームのある豊かな胸が揺れている。
二人をサポートする男性もそこそこ踊れるのだろう。
女性を引き立てるポーズの決め方が手慣れていた。
『プロ並みだな…』
一花だって遊び慣れているなら、ダンスくらい踊れるだろう。
だが、目の前の三人は遊びとはレベルが違う。
『何てヤツだ…。』
ふと周りの視線に気がついた。若い男は一花たちに釘付けだ。
連れの女性が気分を悪くするだろうに、彼女たちの身体のラインや首筋、足の動きから目が離せないのが見てとれた。