宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「やっぱり田舎のお店は賑やかねえ。」
周りの楽しげな雰囲気を壊すように沙良が呟いた。
「そうですか?この辺りならではのアットホームな雰囲気だと思いますよ。」
思わず、陸は沙良の言葉を咎めた。一花を庇ってしまったのだ。
案の定、沙良は気分を害したのか眉を寄せた。
だが、周りの客たちは気にも留めていない様だ。自分たちの会話に夢中なんだろう。
少し若い、杉ばあの息子という人物が雰囲気を察して母親に小声になるよう促していた。
「母さん、せっかく着物も着てんだから上品にしてくれよ。」
「わかったわかった。」
「どうぞ、こちらのお席へ。」
ニコニコと一花は案内している。
陸たちと近い席に3人は座った。
佐久間と呼ばれていた老人も顔見知りなのか挨拶してる。
「お杉さんが言ってた通り、いい娘さんだね。」
「だろう?器量もいいし働き者だし…。何しろ、気立てが良い。」
聞くともなく杉ばあたちの会話が陸の耳にも届いてくる。
「息子さんのお嫁さんにピッタリじゃあないの?」
とんでもない話が聞こえてきた。