宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
沙良との会話はキリが無いのでタクシーを呼んでもらった。
彼女は納得していないが、一花が近くにいるのにこんな無駄話はしたくなかった。
紗良とはすぐに離れたかったが、取引先の社長の娘だ。邪険には出来ない。
タクシーが店に着くと急いで乗せた。
フェリー乗り場でさっさと別れたかったが、何とか堪えてホテルまで送り届ける。
ホテルの玄関先で失礼かと思ったが、今度こそ陸ははっきりと告げた。
「まだオープンにしておりませんが、私はもう結婚しています。」
「聞いてないわ、そんな…。」
「あなたにプロポーズなんて、あり得ません。」
「あなた、昔は結婚しない主義だとか言ってたのに!」
以前、断られた自覚はあったのか。何てオンナだ。
「結婚は事実ですので。」
「でも、指輪だってしていらっしゃらないわ!」
「仕事に差し支えますので、プライベートとは区別しています。」
指輪の事は盲点だった。ダミーでも用意すべきだったか…。