宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
でも、今更後には引けない。
届け出の用紙を見ると、何と水杉陸はもうサインも捺印も済ませている。
『この人は、結婚をどんなふうに考えているんだろう。』
お金の要求しかしていない女とあっさり結婚しようだなんて…。信じがたい。
そっと、陸の表情を伺ってみた。
最初の印象とちっとも変わらない。クールで何を考えているかわかりにくい顔だ。
『ええい、ままよ!』
お金の為だけなんて情けないが、必要なのだ。一花には。
震える手を見られないように慎重に一花は自分の名前を書いた。