宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
陸は一週間休みを取ったと言っていたが、一花にも予定がある。
前から『プチ・ポアン』でパーティーの予約が入っていた日だけはアルバイトに行く事にした。
陸にも溜まった仕事があるから、別々で過ごすにはタイミングが良さそうだ。
「お昼過ぎには帰ります。」
「わかった。」
「いってきます。」
返事変わりのキスを受けて、一花は『プチ・ポアン』へ行った。
今日は結婚披露パーティーだと聞いている。
本当はパーティー会場のアルバイトも頼まれていたが、陸がいるから準備だけにさせてもらったのだ。
料理の下拵えや会場を華やかに整えるだけでも大変だから、マダムには喜ばれた。
「一花ちゃん、これ持って帰って。」
「何でしょうか、マダム。」
「チョッピリいい白ワインよ。お客様が来てるんでしょ?」
「ええ…。」
マダムはウインクだけして仕事に戻った。
狭い島だ。一花が陸と過ごしている事は秋山夫妻の耳にも入っているだろう。
だが、大人の二人は何も聞いてこないし干渉しない。一花にはありがたかった。
『今夜、二人で頂こう。』