宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「そろそろ、一花も妊娠してるんじゃあないですか?」
「貴様には関係ないだろう。」
「とんでもない!一花の産む子が水杉家の跡目を継ぐ約束ですから…。
私にも姪の子供になりますからね。一花の妊娠は大事件ですよ。」
妊娠…。
出来る訳がない…。
一花は眩暈がした。叔父と陸は何て酷い契約を交わしているんだろう。
跡を継ぐとか継がないとか、大切な命を契約で弄ぶなんて!
「悪いが、お引き取り願おうか。」
「またまた…。妻の叔父を追い返すなんて…一花の顔を見て帰りますからね。」
「とんでもない男だな。私が何も知らないとでも思っていのか?」
「へ?」
「死んだ兄の妻が病気なのを良い事に、保険金を騙し取るとはいい度胸だな。」
「何で貴様が…一花が言ったのか!」
「私にも調べるルートはありますから。」
「クソっ…。」
「一花は泣き寝入りしたようですが、私は違いますよ。
水杉家から告訴されたく無かったら、とっととお帰り下さい。」
ドアがバタンと大きな音を立てた。叔父が出て行ったようだ。
一花は、暫く植え込みから出る事が出来なかった。