宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
…そうか…やっとわかった。
彼があんなに激しく求めても、決して私を自分のモノにしない理由が。
『私が産む子を、後継ぎにしたく無いんだ…。』
そうに決まってる。あの強欲な叔父と親戚になるだけでも嫌だろうに
大田原の血を引いた子を水杉の後継ぎなんて…。
『約束』
確かに叔父はそう言った。
『一花の産んだ子が水杉家の後継ぎ』
私、ここにいてはダメだ。叔父との契約のせいで、彼に迷惑がかかってしまう…。
やっと見つけた居場所。
ロンドンでも母の実家でも長くは住めなかった。
この島はとても暖かく一花を迎えてくれたけど、一時凌ぎだったんだ。
このまま陸とお金の為の結婚を続ける意味は無い。
母も病院へ移るから、必要経費は施設の何分の一かの金額になる。
歩に負担がかかるけど…。
私が働けば、少しは援助出来るだろう。
でも、どうしても陸と別れたくないと心が叫ぶ。
『私、彼に縋ってしまってたんだ。』
あの夜、本気で心配してくれた彼の優しさに、
何も心配しなくていいって言ってくれた包容力に…。
縋りついてしまったんだ。
それは彼を愛しているから?
ああ、もう何も考えられない…。