宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「…ですから、まだ若い一花さんを島に閉じ込めるのではなく、開放して差し上げて下さい。」
「それが…。彼女の望みなのか。」
「自由になりたいとおっしゃっていました。」
陸は何も話さなかった。田沼に問い質しもしなかった。
緊張感の溢れる沈黙だった。
『また、やってしまったのか俺は…。』
一花を理解したと思ったのに、その身体に溺れて、また裏切られたのか…。
陸はあっさりと、離婚を受け入れてしまった。
弁護士に何も聞かず何も調べず、さっさとサインした。
『もう、オンナに煩わされるのは沢山だ!』
彼は心の叫びに自ら蓋をした。
『一花を連れ戻せ』と胸の奥では叫んでいたのに…。
自分から離れて行った女に未練は無いと思い込もうとしていたのだろう。