貴方に逢えて
 12時に目覚める。
 今日は、夜勤。その前に、借金を返しに行かなくちゃ。

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 なぜ、私が借金の返済に追われてるかと言うと・・・。

 2年前の9月15日、父と母は、交通事故で死んだ。
信号待ちをしていたら、後ろから、トラックが突っ込んできて、押され、前の車に勢いよく衝突し、潰されて死んだとのこと。
 急に、病院・警察から連絡が入り、全く意味がわからなかった。
 急すぎて、泣けもしない。妹は泣いていた。

やっと泣けたのは、5日後。葬式もお通夜も終わり、一段落したとき、号泣した。

 3カ月が過ぎ、やっと、落ち着いたころ、休日で家で過ごしていた。

 ピンポーン

 チャイムが鳴った。
出ると、スーツを着た、少しこわもての知らない男の人が立っていた。
「はい。」
インターフォンから出る。
「私、山内金融の者です。橘さんにお話があり来ました。」
と。わけわからないが、出ることにした。

「なんでしょうか?」

男の人は話す。
「橘さん。先日、ご両親が亡くなられたということで、ご愁傷様です。
私、山内金融の林と申します。
 実は、お父様は、ご友人の、山田勇作様の連帯保証人になっておりました。」

『山田勇作さん・・・って、お父さんの昔からの友達で、1年前に癌で死んだよね。
お葬式にいってたもんな。』

「それで、山田勇作様は、当社から5000万円を借りておりました。山田様は、1年換えにご病気で亡くなられて、4000万円残っておりまして、お父様が、借金を返してくれていたのです。そのお父様が亡くなられたということで、娘さんである美幸さんに残りを返していただきたいと思います。
 これが、借用書です。」

借用書には、山田勇作さんの名前・連帯保証人に父の名前が書いてありました。

『急に言われても・・・。』

「急に言われても、信用できないと思います。
 ご実家に、同じ借用書があると思いますので、確認してみてください。
 また、改めて、参ります。」
名刺を渡され、帰っていった。

『いや、意味わかんないんだけど。』
とりあえず、実家にいってみよう。

実家に行くと、父の部屋の本棚の書類の中に、借用書があった。

『事実なんだ。なんで、私が・・・。
 でも、妹には迷惑かけたくない。美容師になりたいって必死に、練習して、やっとカットできるようになって、喜んでたし。なんとか、自分でしなければ。』

1カ月後、林さんは再び訪ねて来た。
「こんにちは。林です。
 借用書は見つかりましたか?」

「はい。私が払っていきます。どうしたらいいですか?」

「月に5~10万円ずつでもいいです。
 私どもは、返済してくれればそれでいいので、少しずつでもいいから返して下されば、無理な取り立てには来ません。ただ、返していただけないようなら、取り立てに来ます。」

「わかりました。
 とりあえず、父と母の生命保険から2000万円は払います。残り、400万円にあるので、それは、月々返済していきます。それで、よろしいでしょうか?」

「はい。大丈夫です。ありがとうございます。
 この用紙にサインをお願いします。コピー機あるようでしたら、コピーしてもっていてください。」

借用書の下のほうに、日付とサインをした。
コピーをし、林さんに渡した。

「では、宜しくお願い致します。当社の場所は、この地図になります。
 何かありましたら、名刺に書いてある連絡先に連絡してください。では・・・」
地図と住所が書いた紙を渡される。
林さんは帰っていった。

『頑張るしかない。頑張ろう。節約すれば、なんとかなる。』

こうして、借金返済をすることとなった。

  看護師の給料。
 月28万円+ボーナス100万円。
5万円なら、少しの我慢で返済は可能であった。
毎月、5万円ずつ、支払っていった。
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