キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
そんなすごい会社の社長であるらしい智成のお父さん。
智成の説明によると子供の頃はそうでもなかったのだが、中学を過ぎたころから父の職業や立場というものを理解してくると父が偉大過ぎて、大学生になる頃には話すのも苦手になっていた。
父に従うのが当然で反抗する気も起きないほど父の言う一言一言が重く、命令されるがままに自分の生きる道は決められていたという。
確かに、お父さんの声は自然と人を従わせる威厳があった。
カリスマ性とでもいうのか、企業のトップに君臨するだけあると納得させられる。
「父さんより叔父である白石社長の方が話しやすい。父さんの指示でエカトルに就職しろと言われた時には正直ほっとした」
ウイスキーを煽りハッと息を吐く智成はいつもより吞むペースが早い。
大丈夫? と心配になる。
「父さんに反抗したことはほとんどなかったんだ。だから、今日は本当に緊張した」
「智成が軽くあしらわれてたな。さすが智成の父親」
くくっと笑ったお兄ちゃんにを智成は睨み私に向き直ると謝ってくる。
「初顔合わせをこのパーティーにしたのも、周りに人がいた方が父さんも強いことは言ってこないと踏んだから、案の定すぐに去って行ってくれたからほっとしてる。茉緒には突然のことで混乱させて悪かった。ほんとごめんな」
シュンとする智成になんと言っていいものか反応に困る。でも、不機嫌そうなお父さんを思い出して私はぽつりと言った。
「お見合い相手を差し置いて私が出てきたものだからお父さん怒ってたよね」
「茉緒? 俺は見合いなんて認めてないし、実際見合いはしてない。父さんに茉緒を紹介したのは俺には茉緒がいるとわからせたかったからだ。これで見合いの件は引いてくれると思う。俺には茉緒だけだから、そんな顔するなよ」
「歓迎されてないのは一目瞭然だよな、奥さまの方は分からないけど」
「陸翔!」
シュンとしている私に智成が言い聞かすように言うと、お兄ちゃんが揶揄するように口を挟む。
そんなおにいちゃんを咎めるように智成が睨むとお兄ちゃんは肩を竦めた。

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