キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「ねえ智成、私益木さんに余計なこと言っちゃったかも。お兄ちゃんまたフラれたらどうしよう」
「……まあ、大丈夫なんじゃないのか?」
両親を見送ったあと、浮かない顔をしていた益木さんが気になって智成に訊いたけど、上の空みたいで気のない返事にちょっとムッとした。
でも、智成に怒っても仕方がない。明日お兄ちゃんを迎えに行ったときに先に謝っておこうと思う。
そして、智成とふたりで私のマンションに帰ってきた。
智成は昨日会社に泊ったそうで、今日はこのまま休みだという。
お疲れ気味の智成はソファーに座るとはあ~っと大きく息をついた。
今日はこのままうちに泊まってお風呂に入って早く寝てもらった方がいいだろう。
「智成お疲れさま。今、お風呂入れるね」
「茉緒、ちょっと」
「ん?」
呼ばれて隣に座るとぎゅうっと痛いぐらいに抱き締められた。
「ちょ、痛いよ智成」
それでも離してはもらえず増々腕の力が強くなる。
く、苦しい……。
でも観念して智成の背中に腕を回した。
智成に抱き締められるとすごく安心する。
なんだか、怒涛の二日間がやっと全部終わったんだと思えた。
「茉緒」
暫く無言だった智成が顔を上げ私を見つめる。
「なあに?」
「もし、テロに巻き込まれたのが俺だったら、茉緒はあそこまで心配してくれてたか?」
「はあ!?」
なにを言ってるんだ智成は!
あんな心配で不安で後悔ばかりの時間は生きた心地がしなかった。
お兄ちゃんのときでさえ二度とごめんだと思っているのに、もし智成が同じようになったらと思うとこの世の終わりかと思うくらい衝撃を受けてまともでいられない。
「当たり前じゃない! お兄ちゃん以上に心配で気がおかしくなっちゃうよ! なんでそんなこと訊くのよ! 絶対やだからね! 智成を、失うかも……なんて考えたくもない!」
「わかったわかった、ごめん」
怒って暴れるとそれを押さえるようにまた抱き締められた。
なんか悔しくて涙まで出てきて智成の肩に顔を埋めた。

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