キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
飲み会は早々に切り上げて、智成と私はニヤニヤするお兄ちゃんに見送られて照れつつ、智成の家に来てしまった。
明日は出張だっていうのにそれでも私を連れて帰った智成は家に入った途端に私を抱き締めた。
「はあ~、やっと、心置きなく茉緒を抱ける」
「は? ちょっ、智成?」
体重をかけるように抱きしめられて身動き取れない私はこんな玄関でなにを言い出すんだと焦った。
耳元ではあ~っと息を吐いた智成は体を起こすとにっと笑ってポンポンと頭を撫でた。
「風呂、入ってくるわ」
「あ、うん……」
あれ? なんか智成変? 
笑った顔に少し陰りが見えて元気がないように思えた。
いつもならこう、ギラギラした目で私を見つめて有無も言わさずベッドに連れ込みそうなのに、って、なにはしたないこと考えてるのよ私ったら! 
ブンブン頭を振った私は智成の後姿を見送った。
ちょっと心配になりつつ、すぐにお風呂から出てきた智成と入れ替わりにお風呂に入りリビングに行くと智成はノートパソコンを開いて仕事してるようだった。
「まだ仕事するの?」
「いや、明日の出張の確認してただけ」
「じゃあ、もう寝よ」
「ん? ああ」
パタンとパソコンを閉じた智成の手を取って寝室に引っ張っていった。
「智成、出張の用意はもうできてるの?」
「ああ」
「そう」
なら、大丈夫ね。
ベッドの前に着くと私はいそいそと布団をめくって中に入り隣をポンポン叩いて智成を誘った。
「早く、智成来て」
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