キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「八坂さんが一時不明になったあの日、お兄さまが大変な目に遭っていてご心配なのはわかりますが、風間さんも情報収集に奔走していて大変だったんです! なのにそんな風間さんの足を引っ張るように縋って困らせるなんて」
「え?」
「しかも風間さんはあなたが来てから心を乱されていて。あんな取り乱した風間さんを見たことがありません。あなたは風間さんを支えるどころか苦しめて足手まといでしかないのです」
怒りを抑え込むように淡々と話す有川さん。
有川さんが言いたいのは、お兄ちゃんがテロに巻き込まれ行方不明になってたときのこと。
私は確かにお兄ちゃんが心配でひとりが心細くて智成に縋ってしまった。
確かにあのとき自分のことしか考えていなかった。
「ただでさえプロジェクトと掛け持ちで忙しくしていて休みもままならなかったのに、あの日風間さんは過労で倒れてしまって、見ていられませんでした」
「え!? ちょっと待ってください! 智成倒れたんですか? いつ?」
思わず前のめりになって有川さんが引いてるけどそれどころじゃない。
智成が倒れたなんて聞いてない。
ただなんとなく顔色が悪かった気はしたけど、なにも知らなかった私は愕然とした。
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