キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「ううん、それだけ。智成なにも言ってなかったから驚いて」
「そっか、俺のせいで智成が倒れたようなもんだよな。あいつが言うわけないか」
きっと智成はお兄ちゃんと私に心配かけまいと、倒れたことを黙っていたんだね。
疲れを隠しきれない智成の顔を思い出すと胸が痛む。
「私のせいだよ。智成に無理させてばっかりでなんの役にも立たないのに、私このまま智成のそばにいていいのかな」
「は? なに言ってんだ、茉緒のせいじゃないだろ」
「智成は私と結婚するために無理な条件出されて、しなくてもいい苦労を背負ったから倒れたんでしょ? 私のせいじゃない」
「それは……」
言葉の出ないお兄ちゃんにやっぱりそうなんだよね、と意気消沈で肩を落とす。
「俺が智成の邪魔してたのも原因だ、茉緒のせいじゃない。それにあいつは苦労することもいとわないほど茉緒を愛してるんだ。茉緒が智成のそばにいていいのかなんて悩んでるって知ったらそれこそぶっ倒れるぞ。そんな心配しないで智成のそばにいてやれ。あいつの元気の源は茉緒なんだから」
項垂れる私の頭をポンポン撫でてお兄ちゃんが励ましてくれて、私は力なく笑ってうんと頷いた。
でも、心の中ではまだ悩んでいる。
私、智成に無茶させて足手まといなのに智成のそばにいていいの? 
夜中になっても眠れずに、考えることは智成のことばかりだった。
その日は智成は忙しいのかメッセージだけいくつかやり取りしただけで終わって少しほっとしていた。
電話なんかして声を聴いてしまったら、智成はなにも悪くないのに倒れたことをなんで黙っていたのか責めてしまいそうだったから。
智成とは二週間逢えないのは寂しいと思ったけど、逆に今はこの間で冷静にこれからのふたりのことを考えられると思った。


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