キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です

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出張に行って一週間後のことだった。
いきなり茉緒から暫く連絡できないと言われたのは……。
『ごめん、暫く実家に帰ることになってちょっと電話もメールもできないと思う』
『は? 実家に帰ったってそれぐらいできるだろ』
『う、うん、ちょっと無理かな。智成も仕事忙しいのに毎日電話は大変でしょ。私は大丈夫だから、ごめんね。じゃ、お仕事頑張ってね』
『おい茉緒!』
なんとも歯切れの悪い返答をして一方的に電話を切られチッと思わず舌打ちをした。
俺はどんなに忙しくたって茉緒の声を聴きたいと思ってるのに茉緒は違うのか?
俺と同じように茉緒も逢えなくて寂しい想いをしてるだろうと思ってたのに、この一週間電話してもどこかそっけないし、想いの違いにちょっと憂鬱になった。
その後はほんとに電話を掛けても音信不通。
本当に実家にいるのか? なにかあったんじゃないか? 
心配で陸翔に連絡とったら、本当に茉緒は実家に帰ってるらしい。
茉緒の様子を訊いたら、少し体調悪そうだったから実家に帰って休んでると言う。
陸翔は仕事があるしこういう時は実家にいた方がいいだろうと茉緒のバイト先の寛子さんのアドバイスだそうだ。
出張に行く前も体調を崩していたようだったが、茉緒はそんなに具合が悪いのか?
いてもたってもいられなくて今すぐ茉緒のところに飛んでいきたかった。
心配になり青ざめたが、陸翔はそこまで深刻じゃないと俺を諭す。
それよりもちゃんと仕事をしないと智成の邪魔をしてしまったと茉緒が気に病んでしまうと言われると仕事を放棄するわけにもいかなかった。
出張は残り五日を切った。
体調のことが心配で早く茉緒に逢いたいがために、俺は躍起になって仕事に集中した。
よくも悪くも茉緒はやはり俺の原動力だ。
次々とこなしていく仕事量に出張先の社員たちは唖然としていた。


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