キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「茉緒がいたから、茉緒だから俺は頑張れた。仕事の楽しさを知った。招致は成功してプロジェクトも滞りなく進んでいる。みんな茉緒のおかげだ」
「そんな、大げさな」
私の存在だけでさすがにそれはないだろう。すべては智成の努力の賜物だというのになにを言ってるんだか。
気が引けて頬を引きつらせると、智成は指輪を取り出し私の左手の薬指に填めた。
「茉緒は自分の力を信じてないな? まあ、俺だけ知ってればいいか。もう、茉緒は俺のものだから」
「なにそれ」
指輪をはめた左手にチュッとキスをしてにやりと笑う智成に、なんだか照れて頬が熱くなる。
「約束の期間までまだひと月以上あるが、もうクリアしたのも同然だし、子供もできたことだし、今すぐ結婚するぞ茉緒」
なんて俺様な言い方なんだろう。
一度プロポーズはしてもらってるとはいえ、どうせなら指輪を用意した二度目のプロポーズはもっとロマンチックにしてほしかった。智成なら絶対様になってたはず。私にだってそれなりに理想というものがあったのに見事に覆された気分だ。
なのに智成はにやりと笑っておよそ人生最大の決断をしたとは思えない軽い口調で言うものだからさすがに開いた口が塞がらない。
「ま~お? 返事は?」
プイっと視線を逸らして膨れた私に智成は追いかけるように顔を覗き込む。
その顔が笑っているのだからわざとそうしてるんだと思う。なんだか腹立たしい。
「結婚、しないのか?」
黙っているとそっと頭を撫でられて、急に不安そうに聞いてくる。
それには意に反してキュンと胸が高鳴るのだから私もチョロい。
「……する」
小さく返事をすると、智成にはしっかり聞こえたらしい。
今までにないくらい幸せそうに破顔して私を抱き締めると、チュッチュとまた至る所にキスしてくる。
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