キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「智成お母さんみたいなこと言わないでよ」
クスクス笑う寛子さんに恥ずかしくて智成をつつく。
智成はなにが悪いんだというように顔を顰めた。
私は専業主婦になり智成を支えていくため寛子さんと入れ替わりのように喫茶マリンを辞めることになる。元々そのつもりだったけどやっぱり寂しい。
でも寛子さんというお姉さんのような育児の先輩ができたことは喜ばしい。
ほのぼのと談笑してると来客のベルが鳴った。
思わず条件反射でいらっしゃいませとドアの方を向くと最近よく来るお上品なご婦人だった。
「あら」
私たちのテーブルを見てご婦人がビクッと立ち止まり固まってしまった。
どうしたのだろう? と思っていたら隣から「かあさん」という呟きが聞こえた。
それは間違いなく智成の声。
思わず横を見ると驚いたように見開いた目でぽかんと口を開けていた。
「え?」
「あらやだ、見つかっちゃった」
お上品なご婦人はおちゃめなところもあるらしい。
てへっとかわいらしく肩を竦める。
私はポカンと智成の呟きを反復する。
かあさん……カアサン……母さん?
「え、え? ええっ!?」
やっとこ意味がわかって何度もご婦人と智成を交互に見た。

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