キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
気まずいんです
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「え? お兄ちゃん今日も飲み会なの?」
「ああ、悪いな、留守番頼む。じゃ、行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
へらっと言って出ていくお兄ちゃんに、せっかくカレーがおいしくできたのに今日も食べてもらえないとがっかりしながら手を振る。
「俺は今日は早く帰れるから」
「……ふーん。行ってらっしゃい」
智成がなぜか気を遣うように言ってきたけど私は素っ気なく返して送り出す。
「……行ってくる」
なにか言いたそうにしていた後姿を見送り、冷たすぎたかなと反省。
昨日のことは智成は寝ていて知らないのだし、女の匂いをさせてたって私には関係ないことだと思い直した。けど、私が不機嫌になる筋合いはないのに、ついつい素っ気なくなってしまった。
今は彼女はいないと言っていた智成だけど、あの通りモテそうだし、すぐに彼女ができてもおかしくない。
そうすると私たち兄妹がずっとここに居座ると彼女を家に呼べなくて困るだろう。
それに彼女ができて鼻の下を伸ばす智成を見るのはなんか嫌だ。
早々に出て行ってあげた方がいいのかな。
……寂しいとか思っちゃだめだよね。
思いのほか居心地のいいこの生活がなくなると思うとまるで心にぽっかりと穴が開いたようだった。